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金融サービス機関で最新化する8つの理由

金融サービス企業がECMインフラストラクチャの将来性を確保し、絶えず変化するコンテンツとコンプライアンスの課題を解決する方法をご紹介します。

ECM(エンタープライズコンテンツ管理)の登場から20年が経っても、企業は情報の検索と管理に関して、同じような多くの課題に直面しています。

現在、金融サービス企業は重要な分岐点に立っています。

このガイドは銀行・保険業界のトランスフォーメーションおよびITリーダーを対象としており、次の疑問に答える内容となっています。

  1. ECMが20年以上前に解決しようとした問題を解決できなかったのはなぜでしょうか。
  2. 現代のコンテンツの課題は、プラットフォームベースのアプローチによってどのように解決できるでしょうか。
  3. 金融サービスの企業は、どのようにしてモダナイゼーションのリスクを最小限に抑え、インフラストラクチャを将来にわたって維持することができるでしょうか。

ECMの20年で何が変わったか

物事が変化すればするほど、変わらないことがあります。それが従来のECMシステムの問題です。変化に乏しいソフトウェアが20年続いた後、テクノロジーは限界に達しつつあります。そして、企業は20年前に抱えていた情報管理の問題を依然として抱えています。

CensuswideがハイランドのNuxeoプラットフォームについて独自に実施した調査で、金融サービス業界で働く500人以上の回答者にインタビューを行いました。

その結果、従来のECMが体系的に目標を達成できていないことを示す重要なパターンがいくつか見つかりました。

多くの分散化したシステム

ECMは情報を見つけやすくするものでしたが、回答者は現在、組織が平均9つのシステムに情報を保存していると回答しています。

回答者の12%は、情報は16以上のシステムに保存されていました。約4分の3が、これらのシステムは相互に接続していないと回答しています。

生産性の課題

業務の一環として情報にアクセスする必要があるシステムユーザーは、必要な情報を探すのに毎日平均1時間弱を費やしています。

これは、従業員1人あたり年間30日の労働時間を無駄にしているようなもので、銀行や保険会社はこの問題に数億ドルを費やしていることになります。

コンプライアンスの複雑さ

データに対する規制管理によって、情報の保存とアクセスという問題に複雑さが増しています。

ECMを使用する企業は、20年前のECM導入前と同じ課題に直面していますが、その規模はより大きく、コンテンツの種類も増えています。何かを変える必要があります。

現在、新世代のプラットフォームベースのテクノロジーは、新しいアプローチでこれらの課題に取り組むことができます。

ここでは、金融サービス機関がデジタルトランスフォーメーションへの道筋としてコンテンツサービスに目を向けるべき8つの理由をご紹介します。

1. オムニチャネル体験の需要を喚起する

常時接続が当たり前の現代世界では、顧客はいつでも、どのデバイスからでも、情報への即時アクセスを求めています。企業にとって、Webとモバイルデバイスにまたがる優れた顧客セルフサービス体験を提供する必要性は、かつてないほど高まっています。

これらの顧客にサービスを提供する従業員は、適切なデバイスまたはアプリケーションを介して配信される同じ情報にアクセスできる必要があります。

顧客が異なる情報源から異なる回答を得ることがないように、この情報はすべてのシステムで同じである必要があります(たとえば、ポリシーシステムで住所変更しても、マーケティングシステムに影響を与えないなど)。

CSPの機会: オムニチャネル市場で成功を収めるために、銀行や保険会社は、多様な業務アプリケーションに情報をシームレスに提供する必要があります。

コンテンツサービス・プラットフォーム(CSP)は、アプリケーション統合を容易にする堅牢なAPIとオープンアーキテクチャ、および最新の標準に基づく豊富なモバイル開発ツールキットにより、いつでもどこでも顧客や従業員にコンテンツをシームレスに配信することで、これらのニーズを満たすことができます。

2. 情報アクセシビリティの向上

今日の組織には情報があふれています。

情報は競争上の優位性を生み出すことができますが、現在の状態ではそれができません。複数のシステムに分散し、多くの場合、分断されたテクノロジーのサイロに閉じ込められているからです。

これらの情報(またはコンテンツ)すべてを単一のリポジトリに移動するわけにはいきません。今日では、従業員は好みのツールを使って作業し続けるためです。

SharePoint、Google Docs、Slack、Microsoft Teamsなどの協働的なソリューションがなくなることはなく、BoxやDropboxなどのアプリもなくなることはありません。

CSPの機会:最新のコンテンツサービス・プラットフォームでは、組織の各サイロをつなぎ、その中の情報を連携させる必要があります。

CSPでは、ユーザーが必要なツールを継続的に使用できるようにすることで、複数のシステムで情報が管理されているという問題を解決します。

作成、保存、管理するコンテンツはCSPに表示されるため、チーム内のあるユーザーがTeamsでファイルを共有し、別のユーザーがDropboxを使用しているような場合であっても、権限のある他のユーザーは必要なときにアクセスできます。

3. サイロ化されたシステムの排除

現在の金融サービス組織のほとんどは、合併や買収によって成長してきました。

その結果、非常に数多くの異種システムやコンテンツアプリケーションが、さまざまなECM製品上に構築されています。Nuxeoの調査結果によると、現在の金融サービス組織では、平均して9つの異なるシステムをコンテンツ管理に使用しています。

これらのシステムでは長期間にわたり数多くのコンテンツアプリケーションが構築されています。そのため、レガシーECMインフラストラクチャの最新化を検討している組織では、これらのアプリケーションを新しいプラットフォームに移植するという新たな課題が生じます。

CSPの機会:企業は最新のコンテンツサービス・プラットフォームを活用して、既存のコンテンツシステムに接続し、既存のリポジトリから重要な情報にアクセスすることができます。

CSPの直感的なローコード開発環境により、チームは新しいコンテンツアプリケーションを短時間で構築し、既存のアプリを再構築することができるようになります。

ローコード開発ツールを使用すると、最初に構築するのに早くて数か月(長ければ数年)かかったアプリをわずか数週間で、拡張性を向上させて、より速く動作するように再構築できます。

4. コンテンツの検索可能性を高める

コンテンツ管理はデータから始まります。データの活用により、コンテンツはインテリジェントで見つけやすいものとなり、現代の金融サービス組織の活動が推進されます。現在では、このようなデータの多くは、従来のECMソリューションには存在しません。

ほとんどのコンテンツアプリケーションでは、開発当初に想定されていたユースケースにちょうど対応できるだけのメタデータを使用しています。

異なる情報源やコンテンツシステムが一緒になると、それらの分類法が異なるため、あるシステムからのデータは別のシステムでは認識できません。

CSPの機会:最新のコンテンツサービス・プラットフォームでは、ビジネスに特化したAIやパブリックAIサービスなどのAIテクノロジーを活用して、コンテンツに関連するデータを短時間で強化し、インテリジェントに分析します。

最新のCSPは、複雑な分類法とAIコンテンツの強化を可能にすることで、金融サービス組織が企業全体から重要なビジネス情報を見つけて活用できるようにします。

5. データ取得の効率化

以前は、ほぼすべての金融サービスのビジネスプロセスが事務処理で始まり、事務処理に終わっていました。

その結果、従来のECMシステムでは、画像をキャプチャし、ドキュメントの作成とフローを管理するための強固な機能が発達しました。

このような機能は現在でも重要ですが、世界ではその他のさまざまなコンテンツタイプに移行しました。現在では、コンテンツは動画、音声、その他のリッチメディアなどさまざまな形態を取っています。ソーシャルメディアやインスタントメッセージングツールも一般的です。

その結果、銀行や保険会社は、まったく新しい形式のコンテンツを扱えるようにすることが必要になりました。最新の請求プロセスでは、警察や事故の報告の代わりにモバイルデバイスからの写真や動画を使用することもあり、現在の保険金支払査定担当者は紙ではなくスマートフォームやモバイルデバイスで作業しています。

CSPの機会:最新のコンテンツサービス・プラットフォームでは、新しいコンテンツタイプを単に受け入れるだけでなく、活用しています。

最新のCSPと従来のECMの最も大きな違いのひとつとして、これらの新しい次世代システムは使用する情報の種類に依存しないことが挙げられます。

データやドキュメントから、高解像度の動画、さらには3Dレンダリングに至るまで、プラットフォームベースのコンテンツサービス手法により新しいコンテンツタイプは検索とアクセスが可能になります。

6. 規制の先を行く

コンプライアンス、ガバナンス、セキュリティは、現在の規制の厳しい金融サービス組織において重要です。

課題となっているのは、規則が常に変動しており、そして新しいセキュリティ上の脅威が日々出現していることです。

現在の金融サービス組織は、顧客のコンテンツとデータを、ほんの数年前には予想もしなかったレベルの精度で管理する必要があります。

従来の印刷ストリームソリューションは、明細書、請求書、保険給付明細などの顧客とのコミュニケーションに長い間使用されてきましたが、一方でコンプライアンスに関する負担が生じています。そのことを多くの組織が十分に理解できるようなってきたばかりです。

CSPの機会:最新のコンテンツサービス・プラットフォームでは、顧客のコンテンツとデータを不可分に、最大限のきめ細かさで管理できます。

プラットフォームベースの手法では、ガバナンス、記録保有、セキュリティのためのより強固なサービスを幅広く提供することによって、金融サービス組織はより多くの情報をクラウドに移行しながら、セキュリティとコンプライアンスを強化することが可能になります。

7. クラウド対応環境の導入

クラウドへの移行は、ほとんどの金融サービス組織にとっては当然ともいえる結論です。

現在、ほぼすべての組織が、クラウドが運用上のメリットをもたらすこと、さらにそれによってコストを削減できることを期待しています。

それを実現する方法を知ることは別の問題です。現在、銀行や保険会社が必要としているのは柔軟性です。独自のクラウド環境を実行したい、あるいは実行する必要があると考えている事例もあります。

また、マネージドサービスやPaaSサービスで実行する場合もあります。データの保管場所や所在地に関する要件がある場合は、ハイブリッド環境が求められます。

CSPの機会:最新のコンテンツサービス・プラットフォームにより、組織はプラットフォームをPaaSやコンテナ化された製品として展開でき、顧客が希望するクラウドプロバイダー、あるいはオンプロミスでも簡単にインストールできます。

CSPは、データとコンテンツのストレージを、顧客特有のニーズとデータの所在地の要件に合わせて構成できるため、組織が必要とするあらゆるタイプのハイブリッド化が可能になります。

8. 企業規模を拡張可能にする

金融サービス組織が、異なるデータソースとコンテンツを統合し始め、新しい形式のコンテンツを管理するようになると、拡張性がそれまで以上に重要になります。

現在、最大規模の金融サービス企業にとって、これらの拡張性のニーズは非常に大きくなる可能性があります。

以前は、大手銀行や保険会社の場合、オブジェクトの累積数が数十億に達するまで15~20年かかっていました。

現在では、毎年さらに数十億もの新しいコンテンツオブジェクトを追加できるようにする必要があり、拡張性に関する以前の要件ではすぐに対応しきれなくなります。

このような情報は、その量にかかわらず、すべてをさまざまなデバイス、アプリ、チャネルから瞬時に検索してアクセスできるようにする必要があります。

CSPの機会:最新のCSPは、ハイパースケールの問題に対処するために従来とは異なる方法で構築されており、その規模を数十億、あるいは数百億のオブジェクトまで効果的かつ効率的に拡張できます。さらに、あらゆる種類の情報をペタバイト単位で管理できます。

CSPは、コンテンツの種類やサイズに依存しないため、大きなファイルも小さなファイルも簡単に転送できます。また、CSPでは、大量のコンテンツを追加および管理する必要があるユーザーのために、大量のバッチ取り込みと同時取得率を実現します。

従来のアーキテクチャが行き詰まった理由

現在銀行や保険会社が使用しているECM製品が登場したとき、ソフトウェア開発は別世界でした。

その世界では、モノリシックで高度にカスタマイズされたオンプレミス展開により情報を外部から遮断することによって情報を安全に保っていました。また、外部の情報は機会ではなく脅威と見なされていました。

現在、情報アーキテクトではオープン性と機敏性が重視されていますが、銀行や保険会社のシステムは遅れを取っています。

かつては魅力的だったECM製品は、新しいツールとの簡単な統合や、次世代テクノロジーの活用ができず、行き詰まっています。

柔軟性に欠ける変化に乏しいシステムでは、変化する世界どころか、企業の変化にさえ適応が困難です。多数の企業が情報を保存するために十数個のシステムを使用している場合、ある場所から別の場所にコンテンツを取得するための間に合わせの回避策は時間とコストの浪費につながります。

このようなシステムは限界まで引き伸ばされているため、新しい機能を実装するには時間をかけてカスタマイズする必要があります。

クラウドの買収からモノのインターネット(IoT)まで、あらゆる場面に見られるデジタルの進化は、古い世界、そしてその中に今も存在する企業を急速に置き去りにしています。

従来のECMは、運用コストがかかること、これを基盤とした開発が困難であること、クラウド以前のアーキテクチャと限られたソリューションスイートのために拡張性が制限されていることから、将来に対応しているとは言えません。

従来のソフトウェアに最新の機能を構築しようとするのは、古い要塞の廃墟に超高層ビルを建設しようとするようなもので、かつて要塞を安全にしていた機能も、今では開発を妨げ、進歩の邪魔となっています。

クローズドアーキテクチャを使用しても、データを戦略的に公開し、新しい機能を迅速に構築することはできません。

そのためには、IT部門自体がカスタムソフトウェア会社の役割を果たし、カスタムコードベースを維持するために費用をかけ、その都度最初から作り直す必要があります。

顧客が期待する機能を実装するための基本的な変更でさえ、コードベースに大幅な変更が必要になることがあります。

現在の銀行や保険会社がたどってきたコンテンツ管理の道のりは終わりに近づいています。その道が終わるときに、既存のECMソリューションをアップグレードするか、コンテンツサービス・プラットフォームによる真のモダナイゼーションを実現するかの2つの新しい道のいずれかを選びます。

ECMかコンテンツサービスか、十分な情報に基づいて意思決定を行う

すべての金融サービス企業がモダナイゼーションに直面していますが、今が将来に対応したCSPに切り替える適切な時期なのでしょうか。

既存のアーキテクチャに大きな変更を加えたくない企業の場合、暫定的な解決策として、ECMをアップグレードするか、別の単一リポジトリソリューションを追加するという選択肢があります。

この選択肢が適切な状況は限られています。

次の質問について考えてください。

  • 現在のECMソフトウェアのパフォーマンスに概ね満足していますか(パフォーマンスの問題があったとしても小規模なものだけですか)?
  • 社内ユーザー(と顧客)は通常、適切なシステムにアクセスして適切な情報を見つけることができますか?
  • 計画されているアップグレードパスは低コストで、展開のタイムラインが明確に定義されていますか?
  • ソリューションのアップグレードを戦術的な応急措置として、戦略的変革を後日実行するための具体的な計画はありますか?

これらの質問すべてに「はい」と答えた場合、現時点ではクローズドシステムをそのまま使い、今後のモダナイゼーションに取り組むための選択肢を検討するのが会社にとっては最適かもしれません。

次に、以下の質問について考えてみましょう。

  • クラウドで構築されたデジタルファーストの競合製品に対抗して市場シェアを拡大するための計画はありますか?
  • 現在のソリューションで拡張性の限度に達しているか、または新しいリッチメディアコンテンツタイプ(動画や画像など)の使用を検討していますか?
  • 展開を月単位ではなく週単位で行い、新しい機能の実装を短時間ですませたいと考えていますか?
  • 現在のECMソリューションの限界が原因で、自社におけるお客様サービスの体験がすでに低下していますか?

これらの質問のいずれか1つでも「はい」と答えた場合、コンテンツサービス・プラットフォームは自社のビジネスにとって単なる可能性のひとつではありません。将来のために必要なツールを得られる唯一の道なのです。

廃止サイクルの終了

オープンアーキテクチャは、従来の単一リポジトリソリューションを超える柔軟性と拡張性を実現するだけではありません。

これにより、情報管理ソフトウェアと同じくらい古く、高コストで時間もかかるサイクル、すなわち、投資、展開、アップグレード、廃止のサイクルが終了することになります。

オープンアーキテクチャにより、将来に対応したシステムを構築するための新しい基盤が形成され、解決策が導き出されます。

最新のCSPを使用することで、金融サービス組織はAPIベースのマイクロサービスの「構成要素」を使用し、さらに組み合わせて、新しいアプリケーションを簡単かつ迅速に展開し、進化するテクノロジースタックに適応できます。

ECMの最も長期にわたる問題を解決するモダナイゼーションに向けて、次のステップに進みましょう。