急速な技術進歩に合わせて、IT近代化戦略が必要であるという認識が各業界で広がっています。新しいビジネス課題に対して競争力、俊敏性、回復力を維持するためのITシステムのアップグレードもIT近代化戦略の一環です。ガートナーは、2024年の世界的IT支出額が5兆ドル(2023年から6.8%増)に達するものと予測しています。
ITのアップグレードという概念は、市販化されている中で、高性能な最新機器に投資することであるという誤解があります。ところが、実際には、IT近代化の目的と成果を考えることの方が重要です。つまり、パフォーマンス強化、効率アップ、現在のビジネス目標と一致するような技術的機能への転換を目指す方向に進む必要があります。
そもそも、IT近代化とは正確にはどのようなものであり、貴社にとってどのように実行に移すのが最適なのでしょうか。
IT近代化とは
IT近代化とは組織の技術的なシステム、プロセス、戦略をアップグレードして、効率、生産性、サービス提供の向上を図るプロセスです。
多くの企業は第一世代のコンテンツ管理システム上にデジタル基盤を構築しましたが、その多くは時代遅れのテクノロジーと、変化のめまぐるしい現代の業界環境と互換性がないため、もはやビジネスニーズを満たしていません。企業はこれらのシステムから脱却し、クラウドコンピューティング、自動化されたワークフロー、データ分析、最新のソフトウェアプラットフォームなどの高度な最新機能を備えた技術ソリューションに移行する必要があります。
IT近代化とデジタルトランスフォーメーションの違い
IT近代化がデジタルトランスフォーメーションと明らかに異なる点は、既存の技術的インフラストラクチャ、システム、製品、ソリューションがかかわる点です。企業はこれらのツールのアップグレードに力を入れることで、将来を見据えて業務を遂行し、コストを削減し、急速にデジタル化する世界で競争に打ち勝つことができます。
デジタルトランスフォーメーションはより包括的な概念で、組織が効率的な運営と価値の提供を実現するためにどのようにデジタル技術を採り入れるかという幅広い側面をカバーします。デジタルトランスフォーメーションには、ITシステムの更新に加え、イノベーションの推進や、ビジネスプロセス、従業員ワークフロー、カスタマーエクスペリエンスを全社的に再構築する取り組みが含まれます。
ITトランスフォーメーションは、デジタルトランスフォーメーションより幅広い役割を果たし、新テクノロジーや革新的な戦略を導入するための強固な基盤を構築する重要な最初のステップとなります。
ITを近代化する理由
今日の急速な技術進歩により、IT近代化は企業の必須要素となっています。シームレスなデジタル体験を求める顧客ニーズに応えるには、企業は仕事の効率アップを図る必要があります。
IT近代化は、次の目的に寄与します。
- 運営効率:テクノロジーを近代化すると、プロセスが自動化、合理化され、多くの場面で手作業が不要になります。また、共同作業ツールを通じてコミュニケーションが円滑になります。これらの統合機能により、データ管理と意思決定の質が向上します。
- 拡張性:クラウド対応のコンテンツサービスなどの最新ITインフラストラクチャは俊敏性があるため、企業は大きな混乱を招くことなく、需要、変化するワークロード、さまざまなビジネスニーズに基づいて規模を調整できます。
- 強化されたセキュリティ:最新のITシステムは、データ暗号化、多要素認証、アクセスツールの選別などの高度なセキュリティ対策が標準装備されており、サイバーセキュリティの脅威から機密性の高い重要な企業データを保護します。
- 規制の自動適用:規制の厳格な業界では、最新のITシステムを使用することで規制の追跡と報告を自動化することができ、コンプライアンス要件を満たすのに役立ちます。規制に関するレポートをリアルタイムに生成して、自動提出したり、重要な記録を安全ですぐアクセスできる形で保存したり、企業が法的ガイドラインに従って事業を行っていることを保証する監査証跡を提供したりできます。
- コストと時間の長期的な節約:現代の最新ITツールは、監視、診断、更新システムを内蔵しているため、保守を比較的必要としません。クラウドがサポートするソリューションの保守は、多くの場合、サービスプロバイダーに委託されるため、企業はITインフラストラクチャの修正に費やす時間、費用、リソースを軽減できます。最新のIT技術は、物理的な保管費用、燃料費、材料費、人件費の削減にも貢献しています。
IT近代化の例
技術の近代化方式は、企業のITインフラストラクチャの領域のタイプに応じて、数通りあります。
クラウド移行 | アプリケーションの近代化 | 自動化とAIの統合 | エンタープライズコンテンツ管理(ECM)の近代化 |
アプリケーション、データストレージ、コンピューティングリソースをレガシーシステムからクラウドプラットフォームに移行して、柔軟性とコスト効率を向上。 | オンプレミスシステムからクラウドソリューションへの移行、新しいソフトウェアやハードウェアの採用など。 | 業務の合理化、手作業の削減、ガバナンスとポリシー準拠の合理化、意思決定の改善に人工知能(AI)と自動化ツールを活用。 | クラウドネイティブソリューションを利用する最新ECMシステムで、デジタルストレージ、文書管理、インテリジェントな自動化、スムーズなデータ移行のための統合システムを実現。 |
組織は特定のニーズ、ビジネス目標、業界動向に基づいて、自社独自のIT近代化戦略を策定する必要があります。また、市場に台頭しつつある効率アップ用の新しい技術的機能やコンテンツサービスにも注目する必要があります。
IT近代化で新興技術が果たす役割
新興技術はIT近代化において極めて重要な役割を果たします。実際、新技術は企業がITを近代化する主因となっています。
人工知能(AI)と機械学習(ML)はIT近代化に不可欠な役割を果たします。AIはミッションクリティカルな業務の重要な原動力となっています。従来は人間の介入が必要であったルールベースの手動タスクが最新システムで自動化および最適化できるのはAIのおかげです。MLはAIのサブセットであり、データアルゴリズムを使用して、コンピュータが重要な予測や意思決定を行う方法を学習するのを支援します。綿密な事前プログラミングは必要としません。
AIとMLを組み合わせることで、高度な自動化が可能になります。これにより、プロセスの合理化、データインサイトの取得、意思決定の質向上、保有戦略の改善が促進され、スタッフが戦略に取り組む時間的余裕が生まれます。
ガバナンスプロセスのデジタル化が進む中、システムやデータをサイバー脅威から保護するために、高度なサイバーセキュリティ対策が必須となっています。暗号化ツール、ファイアウォール、アクセス制御などの技術は最新のソフトウェアプラットフォームで利用されており、ITインフラストラクチャや機密情報を保護するために欠かせない要素となっています。
量子コンピューティングは、マッキンゼーがテクノロジーの次の大きな潮流と提唱しているもう1つの新進気鋭のイノベーションです。これは、コンピューティングに対するまったく新しいアプローチであり、複数の計算を一度に実行できるため、従来のコンピューティングシステムで構築された技術よりはるかに高速な処理が可能です。
この技術はIT近代化に多面的な影響を及ぼします。例えば、大規模なデータセットの処理迅速化、自動化プロセスの加速、より厳格なセキュリティ対策の提供が可能です。
5G技術はよく耳にする、流行語にもなっています。基本的には、(4Gに続く)無線技術の最新アップグレード版でありであり、サーバーとクラウドプラットフォーム間のデータ転送を大幅に高速化し、多数の接続デバイス(モノのインターネット)を同時にサポートします。これにより、組織間の相互運用がスムーズになり、大規模なデータ処理、自動化、通信が強化されます。
成功するIT近代化戦略の策定
IT近代化計画を立てるには、既存のITインフラストラクチャの評価、改善すべき領域の特定、適切な近代化戦略の選択、包括的な実装ロードマップの作成など、体系的なアプローチが必要です。以下に、実行可能な手順をご紹介します。
1. 評価と計画
まず、現在のプロセス内で近代化の余地がある部分を特定します。不備のあるプロセス、クラウドへの移行、自動化、セキュリティ強化の余地がある領域を見出します。
近代化する領域を絞り込んだら、それぞれが組織のビジネス目標にどれだけ密接に合致しているか、実装の実現可能性、業務に与える影響(プラスとマイナスの両方)、コストやタイムトゥバリューなどの要因に基づいて、実装の優先順位を決めます。
次に、一連のイニシアチブ、タイムライン、リソースの大枠をまとめた包括的な近代化ロードマップの作成を開始します。
2. ステークホルダーの関与
IT近代化は全社的な取り組みであり、IT目標を現在の戦略やリソースに合わせて、部門全体で連携させ、関連するステークホルダーに必要な要素について説明してもらいます。
3. 適切な技術の選択
選択する技術は、拡張性、セキュリティ、コストを考慮し、貴社のビジネス目標に沿ったものにします。
決定するには、ニーズ調査の実施、市販技術の調査、現行システムとの統合と互換性、費用便益分析、その他の調査を利用します。
業界のトレンドや新興技術を調査することも役に立ちます。主に、こうした要因が類似ビジネスに与えた影響や、その機能が自社のニーズと現在のインフラにどれほど適合しているかを確認します。
4. 実装
大きな変化に引きつけられるかもしれませんが、近代化は段階的に進めるのが最善です。まず小規模のプロジェクトから始めて、徐々に規模を拡大していきます。
5. トレーニングとサポート
ステークホルダー全員が新しいECMソリューションを含む新しいシステムやプロセスにスムーズに移行するために、トレーニングとサポートを提供します。プロセスを実行し続けるには、一貫したトレーニングと更新が必要なため、トレーニングとサポートは継続的な取り組みとなります。
6. 継続的な評価と適応
近代化の進捗状況を定期的に見直し、新しい技術進歩やビジネスニーズに容易に対応できるように、調整可能な形で戦略を立てるようにしましょう。
現代の課題に対応するためにエンタープライズコンテンツ管理(ECM)プラットフォームをアップグレード
長年にわたり、企業はレガシーソフトウェアシステムの更新という課題に直面してきました。現在では時代遅れと見なされている、何年も前に作成されたコードや言語を使った旧式のプログラミングがこうした課題の原因です。
時代が変われば、ソフトウェアの俊敏性も変化します。最新のクラウドプラットフォーム方式を採用すると、組織はビジネスアプリケーションとスムーズに統合し、ソリューションを迅速に導入し、最小限の介入でソフトウェアを簡単に更新できます。
最新のエンタープライズコンテンツ管理(ECM)システムは、最大限の適応性を発揮するように設計されています。予測できない状況でも、次のような方法で、企業を支援するうえで重要な役割を果たすことができます。
- シームレスな情報管理:ECMは、データを読み取り、識別し、単一のクラウドベースのプラットフォームで集中管理できます。これまでサイロ化されていたデータベースを結びつけ、いつでもどこからでもアクセスできるようにして、リモートワークをサポートし、業務ワークフロー全体を強化します。
- リスク軽減:ECMはますます脆弱になっている今日のデジタル環境の中で、サイバー脅威を自動的に検出して効果的に対処するように設計されています。そのために、暗号化、権限、リスク管理と保有、アクセス許可の選択、承認プロセスなどの保護手段が使用されます。
- コンプライアンス:最新のECMは、特に刻々と変化する規制要件に対応するため、コンプライアンスを容易にし、幅広い種類のコンテンツにおけるガバナンス管理の複雑さを軽減します。
- ビジネス俊敏性:企業は変化する市場状況、顧客の要求、社内要件に迅速に適応する必要があります。最新ECMは、情報へのアクセスを合理化して従業員が必要なコンテンツを迅速かつ簡単に見つけられるようになっています。そのために、他のエンタープライズシステムと統合してデータ交換を容易にし、ワークフローを合理化し、部門間のコラボレーションを改善して応答時間とサービス提供を迅速化しています。
最新ECMは、かつてないほどの需要増大や需要の急増に対応し、セキュアでコンプライアンスに準拠した合理的なデータ管理を実現することで、企業の成長、効率性、市場での優位、イノベーションを促進します。
最近の調査によると、最も求められている情報ガバナンスプロジェクトのトップ2は、レガシーデータの除去、およびコンテンツサービス分野の最新技術の実装でした。
InfoGov World – Global Information Governance Survey 2021-2022(ハイランドが後援)
最適なECMの決定
IT近代化は、企業が競争力を維持し、将来規模を拡大し成功を収めるために不可欠な、継続的プロセスです。
企業は自社のテクノロジー近代化戦略を定期的に評価し、それをビジネスの成果物、業績、利益と比較する必要があります。
堅牢なECMプラットフォームは幅広い機能を備えているため、業務効率、セキュリティ、コンプライアンス対策、コラボレーション、コミュニケーションなど、企業のITプロセスのさまざまな側面を大幅に強化することができます。
プラットフォームを選択する際は、既存ワークフローに欠けている点やボトルネックを補完する機能を備えているかを検討します。また、全体的な可視性、意思決定の質、効率の向上に最適な形でコンテンツが統合されるかも考慮します。ハイランドの最新ECMプラットフォームスイートは、さまざまな業界のビジネスニーズに合ったソリューションを提供します。