AIに投資する前に、データがAIに対応可能な状態かを評価しましょう
リーダーたちは軒並み、取り組むべき課題リストの上位にAIを掲げています。ただ、その導入プロセスにおける重大な要素、AIへの対応準備は見過ごされがちです。そこで、ハイランドのインテリジェンス担当AVP、トム・デイビスが、組織がAIに対応可能なデータを準備するための枠組みについて説明します。AI投資の前にご検討ください。
AIは、誇大宣伝の時期が過ぎ去り、近い将来、私たちの文化に根付くものとの認識が広がっています。CIO(最高情報責任者)から高齢者、ソーシャルメディアに登場する10代の若者まで、ほぼすべての人がAI技術で何ができるかを基本的に理解しています。
また、企業が自社の技術スタックへのAI機能の組み込みをこれまで以上に強く求めていることも明らかです。
ただし、AI搭載プラットフォームの導入は、最終目標ではありませんし、誰もが実質的に求めていることでもありません。AIの利点こそリーダーが追い求めている要素であり、AI投資から大きな成果を得るには、AIに投入するために良質なデータを用意することが最短の方法となります。
つまりAI対応可能性とは、AIが高らかにうたうすべてのメリットが実現するように組織内のすべてのコンテンツを構成して、質、関連性、安全性の高いデータをAI技術に投入できるようにすることを指します。
AI対応データの準備
AIは強力な武器になり得ますが、そのためには適切な燃料が必要です。
企業内のコンテンツから良質のデータが自動的に取得できるわけではなく、準備を整えなければなりません。企業のコンテンツ管理プロバイダは、お客様がこの目的を果たすためにデータを適切に変換する独自の立場にあります。
ハイランドのインテリジェンス担当アシスタントバイスプレジデントを努めるトム・デイビスは、次のように説明します。「コンテンツをAIに対応可能な状態にすることは、組織が注力すべき重大な領域です。AIエンジンは、すべてのリポジトリとデータベースから取り出したあらゆるデータをまとめて投入するだけで、すべてを学習すると誤解されることがありますが、それは事実ではありません」
その理由として、まず、経済的に実現可能でない点、次にAIモデルは適切なデータで訓練される必要がある点をトムは指摘します。
「機械学習では、『無意味なデータを入力すれば、無意味な結果が返される』という概念があります。手当たり次第にデータを投入しても、正確な結果は得られません」
AIによりインテリジェントな仮想アシスタントが利用可能になります。このアシスタントは、優れた情報を見つけ、推奨事項を作成し、ガイダンスを提供し、物事をまとめることができます。ユーザーは自然言語を使ってアシスタントを手軽に利用したいと考えています。また、他のシステムにある情報も見つけられるように、複数のリポジトリにまたがった検索を望んでいます。
- ハイランド社インテリジェンス担当AVP、トム・デイビス
AIに対応可能なデータに変換
AIの力を最大限に活用するには、企業データをAIエンジンに投入可能な状態にしておく必要があります。たとえば、データ変換を行い、人間が使用するためにコンピューターに処理させる必要のあるコンテンツを作成します。
ハイランドのAIプロダクトマネージャーであるティアゴ・カルドーゾは、次のように説明します。「テキストと画像が満載された文書を思い浮かべてください。LLMのためにコンテンツを検索する場合は、その意味と文脈を理解し、関連する部分のみを選択する必要があります。さらに、意味や構成を失うことなくモデルの入力データに基づき、コンテンツを分離しながら、微調整を行います」
企業はAIエンジンに投入するのに適切なコンテンツを選択する必要もあります。新しいモデルを開始するのは大変な作業であり、システムの訓練、テスト、微調整に適したデータが必要です。
トムはこの作業を「科学そのもの」として、次のように言い添えます。「モデルを過剰適合または過小適合させる方法はいくつかありますが、間違った情報が多すぎると、回答数が減少し始めます」
AIが持つインパクトの大きいサービスを組織が実装できるようになるには、まず、AIエンジンに投入可能な適切なコンテンツを用意する必要があります。
非構造化データの有効活用化
コンテンツには、構造化と非構造化の両方の形式で、企業が収集する重要なデータが含まれています。ところが調査によると、データソースの80%が非構造化形式であるにもかかわらず、ビジネスプロセスや意思決定に利用されていると推定される非構造化データは10%未満にとどまります。
アクセスできずに使用されていないすべてのデータが生成AIを使用して利用可能になった世界を想像してください。非構造化データの増加が予測される中で、既存データをフル活用できるようになれば、ビジネス上の影響は計り知れません。
AIがこうしたデータソースにアクセスして、有効活用するようになったら、組織は貴重な情報を大規模に抽出し、AIが紐付け可能なセマンティック関係からメリットを得ることができます。
例えば、従来の構造化ソースだけでなく複雑な非構造化文書からもデータをマイニングし、解釈するAIの能力を利用すれば、検索結果をよりインテリジェントなものに改善できます。組織は狭義のメタデータに依存しなくても、従来はばらばらだったデータポイント同士の関係を全体的に把握できるようになるため、特定の検索条件ではなく、関係に基づいて必要な情報を見つけることができるようになります。
AI対応可能性のチェックリスト
ハイランドはコンテンツとAIの両面で専門知識を持つため、インテリジェンスチームのメンバーはAI対応可能性に関して独自の見解を持っています。こうした見解に基づき策定された評価フレームワークは次の5要素を柱とします。
1. インフラストラクチャ
インフラストラクチャが担う役割は、技術面での準備です。組織がAIを安全に活用するには、クラウドでデータを管理するための堅牢で包括的なインフラと、インフラを機能させるための適切なツールが必要です。情報が保存されるデータベースは、ビジネスの浮き沈みに対応できるよう、安全性、準拠性、拡張可能性を兼ね備えている必要があります。
この点に関してトムは次のように説明します。「適切なインフラストラクチャに、AIに対応可能になるようにコンテンツを処理するコンポーネントを配置すると、データベースに安全に保存されているコンテンツに意味のあるつながりが生まれます。これによりAIサービスが容易にアクセスできるようになるのです」
これは多くの場合、組織が自力で実行するのは難しいプロセスとなります。ハイランドがハイランドインサイトを開発したのはそのためです、とトムは語ります。
2. AI対応コンテンツ
AI対応コンテンツを準備するのは、AI導入準備を整えるうえで乗り越えるべきもう1つの技術的ハードルです。質の高いAI出力を得るには、コンテンツのキュレーションが必要です。
この点に関してトムは次のように指摘します。「適切な集積データを策定するには、いくつかの段階があります。まず、文書をいくつかの構成要素に分解して、訓練のためにAIエンジンに送信する必要があります。その結果、生成AIプロセスの下流段階で使用される埋め込みが作成されます。組織はこのプロセスを理解し、準備する必要があります」
例えば、人事部門がAI搭載プラットフォーム用にコンテンツを準備する場合、不適切なラベルや貧弱なタグ付けのある記録を特定し、除外することができる可能性があります。質の高いコンテンツが読み込まれると、モデルのアルゴリズムが実行され、チームは出力をランク付けすることでシステムを訓練できるようになります。また、AIはコンテンツの意図を理解し始めたうえで、自力で改善を図り始めます。
3. ガバナンス
ガバナンスは、技術とビジネスの両面での対応可能性に関係します。AIのガバナンスに関して組織が負う責任は多大であり、データアクセスの監視や悪意のある侵入の検知から、組織全体で責任あるAIの実践確保に至るまで、厳格な基準を設けることで、安全かつセキュアにAIを導入できるようにする必要があります。
AIを製品や日常業務に取り入れる場合、組織は製品チームや従業員向けに明確なガイドラインを策定し、ビジネスのさまざまな側面においてAI関連リスクを軽減する必要があります。
AIの導入と実践を監督し、ガイドラインに技術の進歩と法改正が確実に反映されるようにするには、AI評議会も役に立ちます。
組織のセキュリティとコンプライアンス基準を順守することは不可欠であり、AIがデータに大きく依存することを考えると、強固なポリシーと適切な技術ツールを導入することは、AIを安全に導入するうえで強固な基盤となります。
4. 倫理
「倫理は当社がきわめて真剣に受け止めている側面です」とトムは強調し、「組織が倫理的な基盤を整備することは、責任あるAIの実現に不可欠です」と断言します。
トムによると、倫理はお客様とRFPの共通の懸念事項であり、誠実さ、偏見、説明可能性はすべて、ビジネス面で対応準備を整えるための側面となります。
「AIエンジンが意思決定を下したり、推奨事項を提案したりする場合、お客様はAIがそうした結論に至った経緯と、結論が正確であることを示す指標と評価を理解する必要があります。倫理的な観点から対応可能とは、保護策が整備されている状態を指します」(トム)。
ハイランドのAI基準には、透明性、データ所有権、誠実さ、検証可能な結果、プライバシーとセキュリティ、ガバナンスが含まれます。
AIへの対応準備が整った企業は、倫理的なデータを使用して質の高いAI出力をサポートし、偏見などの懸念要素を監視できます。また、ユーザーがアクセスすべきでない情報を入手するために不誠実なプロンプトの使用を試みるような状況に対して、AIモデルを防御できるようにする必要もあります。
倫理的でないAIの使用の影響は、金融サービス、保険、高等教育を中心に、多数の業界にとってまさに現実的な問題となっています。特定地域の住民への貸付拒否といった従来の慣行から、不正な保険金請求や学生評価に至るまで、リスクは大きく、AIモデルに投入されるデータを偏見や汚染データから保護する必要があります。
5.スキル
今や、AI機能は、新旧問わずあらゆる業界の技術に組み込まれているため、組織がAIを活用した野望を完全に実現するには、そうした野望を完成に導く適切な人材が不可欠となっています。AIスキルを持つ人材の獲得競争は熾烈であり、エンジニアリングやデータサイエンティストから、活用可能なAIノウハウを必要とするビジネスユーザーまで、さまざまな人材ギャップが生じています。高度な訓練を受けた人材に対する組織の採用意欲は旺盛ですが、AIの専門家は人材確保の代替策としてスキルアップを提唱しています。
この点に関して、トムは次のように見解を述べます。「組織内の全員がAIに関して知識面からレベルアップする必要があると考えています。企業は従業員がAIを有効活用して、ROI達成に利用できるようになるように、従業員のレベルアップに必要な予算と手間、時間をより重視するようになるでしょう」
スナップショット:AIに対応可能な企業
企業のAIへの対応準備が整うと、AIを活用した職場の構築という刺激的な作業が始まります。新しいプロセスだけでなく、新たなビジネスチャンスも検討されるようになります。大局的には、従業員とお客様は次のような効率と可視性の向上から恩恵を受けます。
- 正確なビジネス情報を迅速に提供
- 質の高い意思決定を加速
- 時間のかかるインテリジェントな作業をAIに委託可能
- 労働力の支援と拡大
- カスタマーエクスペリエンスの満足度向上
さらに、デイビス氏は、これらの分野が将来のビジョンにおいて特に話題になっていると指摘しています。
包括的なインテリジェント検索
「AIの用途で特に需要が高いのが、よりインテリジェントな検索」と指摘するトムは、次のようにその理由を説明します。「ユーザーが望んでいるのは、会話形式で自然言語プロンプトを使って実行可能な検索です。データが複数の場所にある場合でも、情報を求めて正しい回答を得ること、推奨事項、ガイダンス、実行可能なインサイトを得ることが検索の目的となります」
レガシーシステムではデータラベルやフィルターは狭い範囲にとどまりましたが、AI搭載プラットフォームではその制限を超えて、より人間に近い方法でコンテンツを整理します。ハイランドインサイトをはじめとするインテリジェントなソリューションでは、コンテンツの保存場所にかかわらず、データポイント間のより深い関係を直感的に把握します。さらに生成AIはインサイトと回答を提供することで、検索を次のレベルに飛躍させることができます。
実用されているインテリジェント検索:1,000件の法的契約を見直して、土地所有権というトピックに関する単語を検索する任務を課されたとしましょう。キーワードやメタデータのタグで検索する(または、さらに原始的に印刷した出力データに蛍光ペンで印を付ける)代わりに、従業員はAIを活用して、「当社の標準的な資産譲渡契約における、土地所有権の移転に関するキーワードと条件は?」というプロンプトをシステムに提示できます。数秒以内に結果が取得されたら、従業員は結果を見直し、特に有用な情報を採用できます。
「AIによりインテリジェントな仮想アシスタントが利用可能になります。このアシスタントは、優れた情報を見つけ、推奨事項を作成し、ガイダンスを提供し、物事をまとめることができます」とトムは解説します。「ユーザーは自然言語を使ってアシスタントを手軽に利用したいと考えています。また、他のシステムにある情報も見つけられるように、複数のリポジトリにまたがった検索を望んでいます」
よりスマートな自動化
ハイランドのネイティブな自動化機能により、お客様は使用していなかったデータを活用して関係性を構築することで、新しいビジネスプロセスを推進する可能性に目を向けています。
「ユーザーは、プロセスの前進を後方支援する自律的エージェントとしてAIを使用することに価値を見出しています。AIは、処理と自動化作業を全面的に手掛けることができます。何より重要なのは、多数の業務は適切な情報を使って自動化できるとユーザーが本当に理解することではないかと私は思っています」とトムは語ります。
しかも、ここでいう自動化とは単なるプロセスの自動化ではありません。AIは、これらプロセスの担当者の能力を増幅・強化し、より迅速かつ効率的に作業できるようにします。AIモデルは、プロセスの仕組みを理解し、学習内容に基づいてプロセスフローの変更を推奨することさえ可能です。
ライフサイクルを自動化し、処理時間を短縮できれば、より低コストで、より多くのビジネスを大量に実行できるようになります。AIのインパクトはそうした用途で顕著に現れるでしょう。
- ハイランド社インテリジェンス担当AVP、トム・デイビス
メタデータを超えたインテリジェンス
AI対応コンテンツが用意されれば、情報ライフサイクル全体がアップグレードします。AIによって構築・理解されるデータポイント間の関係は、コンテンツ管理、プロセス、検索、ガバナンスを強化する機会につながります。例えばAIは、次の方法でワークストリームを強化します。
- コンテンツ管理:非構造化コンテンツからより多くの量の価値の高い情報を整理、認識、抽出、有効活用可能になるため、より包括的にコンテンツを管理して、意思決定の質を高めることができます。
- プロセス:非構造化コンテンツから関連性のある重要なデータの意味を見出し、人間のようなインテリジェンスを使用してワークフローを推進するAIの能力で、より複雑なプロセスを自動化できます。
AIのさまざまな用途
企業全体でAIを効果的に活用するには、時間、教育、イノベーションが必要です。多くの組織は、AIに対する自信、使用スキル、創造性を習得するにつれ、AIの利用を拡大しています。トムはAI実用シナリオとして次の3段階を紹介しています。
レベル1:AIが人間をサポート
従業員があらゆる要因を検討して、決断を下す既存プロセスがこのシナリオに該当します。AIはコンテンツに関する質問への回答を提供するサポート役としてプロセスに介入できます。現在では、従業員が何千もの文書を読む代わりに、AIが内容を要約し、十分な情報に基づいた決断を迅速に下すのに必要な情報を従業員に提供できるようになっています。
レベル2:AIがプロセスを自動化し、人間がレビュー
このシナリオでのプロセスでは、AIモデルが手間のかかる作業を担当し、その結果を高度なスキルを持つ従業員に提示し、レビューを受けます。例えば、プロセスにAIが自動化可能な決断が5つあるとします。AIモデルはこれらの決断を下す過程で、確認フローに戻ることもありますが、最終的にはそのプロセスをやり遂げます。モデルの結果は、高度な訓練を受けた従業員に送られ、レビューされます。このようにインテリジェントな作業と熟練したレビューで強化されることで、効率が向上し、人間が時間をかける作業の質が向上します。
レベル3:100%AI駆動
モデルの精度が99%に達すると、完全に運用可能と見なされます。もちろん、ガバナンスと品質管理は依然として必要ですが、この段階ではAIは完全に自動化されたチームの一部となります。
ハイランドでAIに対応可能に
AIが機能するにはデータが必要であり、データはコンテンツから生まれます。
そのため、ハイランドをはじめとするコンテンツ管理プロバイダは、お客様がAIの力を活用する支援をするうえで独自の立場にあります。委託されたデータの信頼のおける管理者として、ハイランドはお客様がAIの約束するメリットを享受できるように、当社プラットフォームのエクスペリエンス、インサイト、効率をレベルアップすることに全力を注いでいます。
「ハイランドは安全なプラットフォームと共に、各種ツールを提供しています。これらツールは、お客様のコンテンツをAIに対応可能にし、ガバナンスを監視・評価し、倫理面で検討を要するシナリオを検出・監視する目的を果たします。言うまでもなく、プラットフォームにはお客様がソリューションを利用するうえで必要となる幅広いインテリジェンスサービスとスキルも付随します」(トム・デイビス)。
ハイランドインサイトなどの当社のクラウドネイティブサービスは、コンテンツを充実させ、AIの力を活用するためのものです。
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